動物の病院 くすめ

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猫の環境ストレス:サインの見極め方と予防方法

      2024/08/15

最近、身体じゅう舐めて脱毛・トイレ以外でおしっこをするなど、このような悩みで来院される飼い主さんがいらしたので、皆さん共通した要因(新しい家族ができた、もう一匹迎い入れたなど)がありましたので、お話させていただきます。

環境変化によるストレス。

ひともそうですが、環境の変化は不安も伴います。特に縄張り意識の強い猫にとっては、ひと以上に感じてしまいます。なので少しでも不安を軽減させ快適に過ごせるようになればと思います。

ストレスサインとしてあげられるものは

  • 食欲不振: 急に食べなくなる、または食べる量が減ることがあります。
  • 隠れる: 普段は出ている場所から離れて、隠れるようになることがあります。
  • 過剰なグルーミング: 体を過剰に舐める、毛が抜けるほどグルーミングを行うことがあります。
  • 攻撃的行動: 急に噛んだり引っ掻いたりするようになる場合があります。
  • トイレの失敗: トイレ以外の場所で排泄することがあります。
  • 異常な鳴き声: 不安そうな声で頻繁に鳴くようになることがあります。
  • 嘔吐

etc

ストレス要因と予防方法

1引っ越し

 転勤などの引っ越しで、新たな場所で新生活を迎える猫もいると思います。生活環境が大きく変わる引っ越しは猫にとって自分の縄張りから出ることになり、ストレスを感じます。ついつい新居には新しいものをと考えてしまいますがしばらくは今まで使っていたものを使用してください。たとえばトイレ、食器、ベットなど。空間が自分のニオイに満たされているとリラックスします。

2.家族構成の変化

 学校や仕事の関係で、家族の一人が家をでたり、戻ってきたり。結婚・出産によって家族が増える。いつも遊んでくれたひとがいない、知らないひとがいるというのもストレスの原因の1つです。いままで一緒にいたのに💦と思われる方もいらっしゃると思いますが、しばらく離れて暮らしていると猫にとっては知らないひとになってしまいます。必要以上にかまわずに猫のほうから近寄ってきたらおやつをあげるなど距離を縮めていってください。

3.来客

 来客は、警戒心が強い猫にとっては知らないひとが自分のテリトリーに入ってくるため、ストレスを感じることがあります。ひとが好きな猫例外ですが。出来るだけ会いたくないので、隠れて出てこないことが多く、トイレや水を我慢する猫もいます。そういった場合はお客さんと会わないように別の部屋に誘導してあげてください。部屋が難しい場合はキャリーケースを。猫は狭いところ、暗いところも安心できる場所です。もちろん、そこにはお水やお食事、トイレの準備も忘れないでください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                                      ※一時期、乾燥機の中に入るのがマイブームだったナナ🐈

4.トイレについて

 猫はとてもきれい好きなので、汚れていたり、トイレがしにくい形のものだと粗相が増えたり我慢したりします。猫のトイレは猫の頭数+1個程度がいいといわれています。しかし、多頭飼いの場合現実的に難しいことも。一番はトイレを常にキレイにしておくことです。トイレをしたらすぐに片づけてください。また猫のトイレ場所は、静かで風通しが良く、猫の食事場所から少なくとも数メートル以上離してあげてください。数メートルも離すことが難しい場合はパーテーションや家具を使って視覚的に分離することで、猫がそれぞれの場所を独立したものと感じやすくなります(視覚的な分離)。猫は清潔を好むため、トイレの近くに食事を置くと不快に感じる可能性があり、食欲不振やトイレの問題につながることがあります。

 

4.運動量不足

 若い猫は自分の縄張りの確認のためたくさん移動をします。走れない、ジャンプできない環境はストレスになります。キャットタワーなどを利用して上下に行動できる環境を整えてあげてください。

 

5.騒音

 自宅付近で工事がはじまったり大きな音がなり続けることもストレスの原因のひとつです。ダンボールに毛布をかけてあげて避難所を用意してあげてください。

ストレスが原因で引き起こす病気

1. 下部尿路疾患(FLUTD)

ストレスは猫の下部尿路疾患(FLUTD)の一因となることがあります。特に、ストレスが膀胱炎を引き起こしやすくし、尿路に問題を生じさせることがあります。この疾患は尿の排出困難や血尿、頻尿などの症状を引き起こします。

2. 毛づくろい過剰(過剰グルーミング)

ストレスを感じた猫は、過剰に毛づくろいをすることがあります。これは「心因性脱毛症」とも呼ばれ、毛が抜けるほど舐め続け、皮膚が荒れたり、炎症を起こすことがあります。

3. 消化器系の問題

ストレスは猫の消化器系にも影響を与え、嘔吐、下痢、便秘などを引き起こすことがあります。特に、急性のストレスが猫の食欲に影響を与え、食べすぎや食欲不振を引き起こすことがあります。

4. 免疫力の低下

長期間のストレスは猫の免疫システムを弱らせ、感染症にかかりやすくなる可能性があります。これにより、ヘルペスウイルス感染症(ネコカゼ)やその他の感染症(伝染性腹膜炎(FIP))にかかりやすくなることがあります。

5. 行動問題

ストレスが原因で、攻撃性の増加、過度な鳴き声、トイレの失敗などの行動問題が発生することがあります。また、隠れたり、人間や他の動物との接触を避けるようになることもあります。

6. 肥満や体重減少

ストレスが原因で食欲が変動し、肥満または体重減少を引き起こすことがあります。過食はストレスを和らげるための行動となり、逆にストレスで食欲が低下することもあります。

                                                                  以上

ストレスによって体調を壊している場合は自然と治る場合がありますが、何日も続く場合は一度、来院をおすすめします。

 猫にとって何がストレスになっているか理解してあげることは難しいことかもしれませんが少しでも皆さんの参考になればと思います。またはじめて猫を迎えることになった飼い主さんにも参考になれば幸いです

 

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