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愛犬・愛猫の健康を守るために ~臭嚢炎(しゅうのうえん)について知っておきたいこと~

      2024/09/29

臭嚢腺(肛門嚢)とは?

臭嚢腺(しゅうのうせん)とは、犬や猫の肛門の左右両側にある小さな袋で、例えるなら「スカンクの臭い袋」のようなものです。この臭嚢腺は、動物が匂いを発するための器官で、通常は自然に分泌物が排出されます。しかし、分泌物が過剰に溜まると、臭嚢が炎症を起こすことがあります。

臭嚢腺(肛門嚢)は肛門の左右両側の皮膚の直ぐ下(指で押さえている箇所)にあります。     

※写真に写っている黒っぽいものは臭嚢です。  


臭嚢炎とは?

臭嚢炎(しゅうのうえん)は、犬や猫の肛門付近にある臭嚢(しゅうのう)に炎症が生じる病気です。通常、この臭嚢は分泌物を少量ずつ排出しますが、排出が滞ると細菌感染や炎症を引き起こし、臭嚢炎となります。


臭嚢炎の症状

以下の症状が見られたら、臭嚢炎の可能性があります:

  • お尻を床に着けて引きずる(スリスリ行動)
  • 肛門周辺を頻繁に舐める
  • 肛門を触ると痛がる
  • 悪化すると袋が破裂し、出血する場合も


治療方法

1. 軽度の臭嚢炎

  • 治療内容:抗生剤や消炎剤などの内服薬で治療を行います。この段階では外科的処置は必要ありません。痛みが比較的軽く、腫れや膿が少ない場合に有効です。
  • 治療期間:1〜2週間ほどの薬の投与で症状が改善されることが多いです。

2. 重度の臭嚢炎(膿が溜まっている場合)

  • 治療内容:膿が溜まって痛みが強い場合、または臭嚢が破裂している場合には、外科的処置が必要です。以下の処置が行われます。
    1. 切開と排膿:膿を取り除くために患部を切開し、内部の膿を出します。
    2. 洗浄と薬剤注入:患部を丁寧に洗浄し、抗生剤や消炎剤を直接注入します。
    3. 局所のケア:破裂した場合、皮膚が自然に塞がるまで定期的な清掃と経過観察が必要です。
  • 治療期間:切開後の回復には2〜4週間ほどかかることが多く、週に数回の通院や処置が必要になる場合もあります。

3. 再発する場合

  • 治療内容:再発を繰り返す場合、臭嚢の摘出手術(臭嚢腺切除)を行うことが推奨されることもあります。
  • 治療期間:手術後の回復には1〜2ヶ月かかることが一般的です。術後は経過観察と適切なケアが求められます。

臭嚢炎の予防

定期的なケア

臭嚢炎を予防するために、定期的に臭嚢(肛門嚢)をしぼり出すことが効果的です。通常、1ヶ月に1回程度が目安ですが、犬や猫によっては2〜3ヶ月に1回でも十分な場合があります。

  • 自宅でのケア:飼い主が自宅で行うことも可能ですが、技術が必要です。無理をせず、困難な場合は専門家に任せましょう。
  • トリミングや病院でのケア:トリミングに行った時や予防接種の際に、臭嚢絞りを依頼するのも有効です。

よくある質問 (Q&A)

Q1. 臭嚢炎は犬と猫どちらに多いですか?
A1. 臭嚢炎は特にに多く見られますが、猫にも発症することがあります。犬の中でも、小型犬や肥満の犬で特にリスクが高いです。

Q2. 臭嚢炎は再発しやすいですか?
A2. はい、臭嚢炎は再発しやすい病気です。特に、定期的に臭嚢を絞らない場合や、体質的に分泌物が多い犬や猫では再発のリスクが高まります。

Q3. 臭嚢炎は放置しても大丈夫ですか?
A3. 放置すると、袋が破裂して感染が広がったり、皮膚や周辺組織が深刻なダメージを受ける可能性があります。早期の治療が重要です。

Q4. 臭嚢を自宅で絞るのは難しいですか?
A4. 自宅で行うことも可能ですが、力加減や正確な位置の把握が難しいため、最初は動物病院やトリマーに教わることをお勧めします。

Q5. 臭嚢炎の手術はどのようなリスクがありますか?
A5. 臭嚢腺切除手術は比較的安全ですが、術後に排便の際に肛門周囲の筋肉が弱くなるリスクがあります。獣医師と十分に相談して手術を検討してください。                        

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